楽焼 内窯焼成
伝統工芸士 三代吉村楽入氏の内窯焼成です。
今回の画像に使用している窯は、市販の楽焼用灯油窯です。
吉村楽入氏は、自身の作品(萬福堂印)を焼成する際は、手作りの炭窯と手作りの重油・薪の併用窯を使用しており、工房作(楽入印・楽入窯製)はこの画像の灯油窯を使用しておられます。
焼成とは成形した未処理の陶器を窯内で加熱処理をし、陶器の組成分カオリン、長石、石英等が安定した構成化合物になる事を言います。
未処理の陶器を加熱処理をしますと、陶器の組成分カオリン、長石、石英等の分子の結晶水が蒸発して、カオリン粒子、長石粒子、石英粒子が凝集し、陶器の内部、表面に空孔を生じます。
カオリン粒子で説明しますと
Al2O3・2SiO2・2H2O → Al2O3・2SiO2
に成り結晶水が除去されます。
この段階では空孔があるため、水が浸透し易く吸水性は高くなります。表面にも空孔がありますので、浸透した水分が表面に滲み出て来ます。
さらに焼成を続けますと、全ての組成分が溶融しガラス化して固化し、これにより陶器全体が固く焼き締まった状態になります。この状態のなりますと吸水性はなく、表面に水分が滲み出ることはありません。
内窯焼成は、家屋内に作られた小規模な窯で750~1100℃の低温で焼成する技法です。
一般的に陶器は、登り窯の様な大規模な窯で大量の陶器を1300℃の高温で60時間前後、焼成します。高温で焼き締めを行いますので、器の窯出しは慎重を要し、直ぐに取り出しますと急冷で器が割れてしまいます。焼成と同じ位の時間をかけてゆっくり窯を除冷した後、窯から取り出します。
これに対して、内窯焼成は手捏ねで成形した器を窯入れ・焼き締めした後、窯から取り出し少し除冷した後、水に付けて急冷いたします。
内窯焼成の楽焼は低温で焼き締めして急冷いたしますので、器の組成分が完全に溶融・ガラス化せず、多孔質な吸水性がある(水分が滲み出る)焼物に仕上がります。
お抹茶碗として、長年、お使い頂きますと、お抹茶が楽焼に染み込み独特の風情を醸し出します。
これこそが、千利休が求めた美と言えます。
伝統工芸士 三代吉村楽入氏の内窯焼成の動画はこちらです。
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